第263回物質科学セミナー 2022年 9月 28日 (水) 松平 和之 氏「イリジウム酸化物 Ca5Ir3O12の逐次新奇相転移と電流誘起物性」
題名
イリジウム酸化物 Ca5Ir3O12の逐次新奇相転移と電流誘起物性
講師
松平 和之 氏 (九州工業大学)
日時
2022年 9月 28日 (水) 17:00 – 18:15
場所
総合科学部 J306
講演要旨
近年,スピン軌道相互作用が強い 5d 遷移金属酸化物において新奇物性が見出され活発な研究がなされている。イリジウム酸化物 Ca5Ir3O12 は Irが中間価数状態(Ir+4.67)にあり,結晶構造は空間反転対称性を持たない六方晶(P¯62m, #189)である。歪んだ IrO6 八面体が c軸方向に辺共有の 1次元鎖を成し,また,その Ir の部分格子が c面内において三角格子を形成しており,Ca5Ir3O12 は幾何学的フラストレーションを内在したスピン軌道結合系物質である。その電気伝導性は半導体的で,105 Kで非磁性の2次相転移,7.8 K で磁気秩序を示す。また,c軸方向の電流密度が増加するにつれて抵抗が小さくなる非線形伝導などの電流誘起物性を示す。ここ数年の研究により,105 Kの相転移は電気トロイダル秩序であることが明かになってきた。また,最近,電流印加下でのラマン散乱測定から,電流誘起の構造変化と電流誘起物性の関係が明らかになりつつある。これらの研究紹介に,研究での経緯を交えてお話します。
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