第266回物質科学セミナー 2023 年 9 月 7 日 (木) 堤 康雅氏「流体におけるスピントロニクス」
題名
流体におけるスピントロニクス
講師
堤 康雅 氏 (関西学院大学)
日時
2023 年 9 月 7 日 (木) 16:30 – 17:50
場所
総合科学部J205
講演要旨
近年のスピントロニクス分野の一つの目標は、スピン角運動量の流れであるスピン流を利用したデバイスの開発である。スピン流の生成によく用いられるのは金属中のスピンホール効果を利用した方法であるが、この手法を使えるのはスピン軌道相互作用が強い白金などの希少金属に限られている。スピン軌道相互作用とは別に、力学回転による角速度もスピンと結合することは、Einstein-de Haas 効果や Barnett 効果として古くから知られている。最近、スピンと力学回転の結合を利用することで、様々な物質中でスピン流を生成できることが明らかになってきた。本セミナーでは、流体の渦度から生み出されるスピン流を紹介したい。グラフェン中の伝導電子は、電子間の散乱頻度が大きいため電子流体とみなすことができる。 グラフェンに電流を流すことで作られる電子流体の渦度を利用すると、スピン流を効率的に生成できることを紹介する。また、フェルミ液体の教科書的物質である液体ヘリウム3では、流れが生み出す核スピンへの有効磁場が定量的に見積もられることも示す。
理工学融合共同演習の認定科目です