第274回物質科学セミナー 2025 年 9 月 11 日 (木) 勝野 弘康氏「非平衡ダイナミクスによって誘起される結晶相転換」

題名

非平衡ダイナミクスによって誘起される結晶相転換

講師

勝野 弘康氏(金沢大学 学術メディア創成センター)

日時

2025 年 9 月 11 日 (木) 16:20 – 17:50

場所

総合科学部 J303

講演要旨

系内に2つの結晶相が同時に存在すると,エネルギー的に有利な安定相が成長する.カイラル結晶であるアミノ酸や糖では,カイラル結晶が双安定になり,両者が共存する.ところが,過飽和溶液中の粉末結晶をガラスビーズで粉砕しながら成長させると,粉末結晶は,単一相だけになってしまう.この熟成は,オストヴァルド熟成とは異なるとされ,ヴィエドマ熟成と呼ばれるようになった.近年では粉砕ではなく温度昇降するだけでも似たような現象が起こることが示されている.そこで,クラスタの合体機構を考慮した簡単な模型を使ってこれらの現象を調べたところ,鏡像体過剰率が 10%の結晶分布から約 100%の結晶分布へと転換できることがわかった.鏡像体過剰率の指数関数的増加や温度昇降を止めると転換も止まるなど実験で示された結果を再現できている.理論的には,これらの操作によって一般的な安定相構造から準安定相構造の結晶への転換が可能であることが分かった.
[1 ] H. Katsuno and M. Uwaha, Phys. Rev. E, 93, 013002 (2016).
[2 ] H. Katsuno and M. Uwaha, J. Phys. Soc. Jpn. 90, 044001 (2021).
[3 ] H. Katsuno and M. Uwaha, Phys. Rev. E, 107, 044114 (2023).
[4 ] H. Katsuno and M. Uwaha, Cryst. Growth Des. 25, 3735–3731 (2025).

理工学融合共同演習の認定科目です

世話人:田口 健 (内 6538)